Column
個人情報を重く受け止めるようになった理由
1990年代、引っ越し会社の基幹システム化を担当していた頃の話です。恥ずかしながら当時の私は、個人情報の重みをそれほど深く考えていませんでした。
お客様との打ち合わせを重ねる中で、その会社が「夜逃げ」の引っ越しを請け負っていることを知りました。最初は、無計画にお金を借りて返済できなくなった人が夜逃げをする、という漠然としたイメージしか持っていませんでした。
しかし、実際は違いました。夜逃げの多くは、夜間ではなく日中に行われていることを知ります。それは、DV(ドメスティック・バイオレンス)からの避難でした。パートナーが会社に出かけている間に、家財道具と子供を連れて、住まいを離れる。
逃げられた側が包丁を持って引っ越し会社の事務所に押しかけてくることもあると聞きました。もし引っ越し先の情報が漏れれば、それは人命に関わる重大な事態になりかねません。
この経験以来、私は個人情報の漏洩を「人命に関わりうること」として認識するようになりました。それは今も、システムを設計・開発する上で変わらず根底にある価値観です。